介護認定を受けた高齢者はさまざまな介護サービスで介護士から介助を受けることができます。この介護サービスを高齢者に提供するにあたり、基本的な用語の違いを覚え、介護の現場で必要な資格や求める人材を知っておくことは事業者にとって欠かせません。介護事業を開業する前に介護サービスに係る介助の意味や資格の種類などについて確認しておきましょう。
介護と介助の違いとは?
介護の現場で、よく使用される言葉に「介護」と「介助」があります。一般的には区別せず使用されることも多いのですが、介護の現場では、使用場面に合わせて下記の通り区別して使われています。
■介護
病気や障害で日常生活に支障をきたしている人に対して、身の回りの世話全般(家事、入浴、食事等)の自立を促す手伝いをすることです。
■介助
介護の中で、食事介助や入浴介助など具体的な手助けを指します。介助には「自立」「一部介助」「半介助」「全介助」の4段階があり、介助を受ける高齢者の症状により段階を決めて行いますが、過度な介助は高齢者の自立や能力を後退させてしまうので、「どこまで介助するか」の見極めが大切になってきます。
つまり、「介護」は介助や生活支援による自立援助という全体を表すのに対して、「介助」はその時その時の行動を補い、その行動が終わったら完了というものです。
介護に必要な知識や資格とは?
介護の現場では、常に人手不足という現状もあり、資格がなくてもできる有資格者のお手伝い程度の仕事もたくさんあります。しかし、それでは、有資格者と給与の差がうまれ、専門的な知識もないため現場で判断に困る場面に遭遇することもあるでしょう。
そのため、とくに資格が必要でない介護職でもやりがいを持って働くという意味で資格は取得しておくことがおすすめです。
介護系の資格は種類が豊富で、一番ハードルが低いものだと研修だけで取得可能な「介護職員初任研修(ホームヘルパー2級)」や「介護職員実務者研修(以前のホームヘルパー1級)」があります。また、看護師や理学療法士、作業療法士などの国家資格も介護の現場で活躍できる資格です。ただし、上記の研修のみで得られる資格と比べると、いずれも専門の学校を卒業し、国家試験に合格する必要があるため難易度がぐっと上がります。
とくに資格がなくても介護の現場で働くことは可能なので、まずは無資格で働いてみて続けられそうならどんどん資格を取っていきましょう。業務を覚えながら現場に必要な資格がわかるので無理がありません。
介護事業を行うのはどんな人が向いている?
介護の現場では、高齢者のお世話というメインのサービス以外にもさまざまなトラブルに対応する危機管理のシステムや雇用主として従業員の確保やサービスの質向上のための研修や会議などを総括していかなければいけません。事業者としてはまず介護の業務を把握し、とっさのトラブルに対して瞬時に判断できる危機管理能力が必要だといえるでしょう。
また、運営上の悩みやトラブルを解決するための相談先を確保することも事業者として大事です。個人の知識や経験では限りがありますので、フランチャイズ本部の力を借りて、開業前後のさまざまなシーンで相談し助けてもらうことができれば失敗のリスクを大幅に減らす事ができます。オーナー会議や管理者会議に参加することで事業者同士の情報交換する場の確保もしていくことも大切です。
事業主とは言わば中小企業の社長と同等の立場ですから、最後はやはり人と人とのつながりが大切になってくることはいうまでもないことでしょう。利用者や従業員の話に耳を傾ける姿勢や、フランクに話し合える職場環境を作ることも事業主としての力量が発揮されるところです。
事業主として本当に必要なこととは
介護に関わる業務は、無資格でも行える介助の補助の仕事から資格を有してないと行えない仕事など幅広い業務内容があり、事業者はスタッフを雇う際にどのような人材が必要か把握する必要があります。また、事業者自身がスタッフの一人として業務を行う際には介護士の1人としての基礎的な知識をもつことも求められます。
しかし、一番大切なのは高齢者の気持ちに寄り添い、利用者にとって必要なサービスを考える「奉仕の心」といえます。人に尽くそうという気持ちがなければ福祉サービスのビジネスでの成功は厳しいため、利用者と従業者がより楽しく生き生きと過ごせる環境を目指していきましょう。